すみれ乳児院憲章
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すみれ乳児院は2017年9月に大阪市旭区に移転し、それまでの50名定員の大舎制から35名定員のユニット制に変わり、1ホーム6名の少人数で家庭に近い生活になりました。そして、少人数で家庭的な生活をして見えてきたこと、利用者を支援する上でもっとこうしたいと考えることをまとめてすみれ乳児院憲章の改訂を行いました。
1999年のすみれ乳児院憲章の作成から23年が経ち、乳児院を利用する子どもたちや保護者の方々の抱える課題も変化し、乳児院自体も新たな役割が求められています。一人ひとりが大切にされ、誰もが「生まれてきてよかった」と思えるような安心・安全な社会を築くためにも大阪福祉事業財団の「綱領」と「すみれ乳児院憲章」を施設運営の基本とし、いま目の前にいる子どもたちと保護者の方々、地域の子育て中のみなさんを、丁寧に支援していきたいと考えています。
すみれ乳児院では“子どもの権利条約”に基づき、すべての「子どもの最善の利益」が尊重されることを基本にしています。
2022年にすみれ乳児院憲章を一部改定しました。
ある日わたしたちのお父さんとお母さんが出会い、そしてわたしたちが生まれました。
わたしたちの中には、お父さんやお母さんがわたしたちの誕生を心から待ってくれていた場合もあり、また不安と戸惑いのままお母さん一人っきりで産んでくれた場合もあります。
わたしたちは生まれてからまだ少ししかたっていませんが、わたしたちの中には、すでにお父さんやお母さんがそばにいない子もいます。 わたしたちは、お父さんやお母さんが働かなければならなかったり、病気だったり、さまざまな理由でどうしてもわたしたちを育てられなくなって、突然ここに来ました。
わたしたちは“赤ちゃん”と呼ばれ、家庭ではお父さんやお母さんに愛され、いろいろと助けてもらって生活しますが、ここではお父さんやお母さんから離れて、わたしたちを愛してくれるたくさんの大人に見守られ、24時間友だちと家庭に近い環境で生活しています。わたしたちは、泣きたい気持ちや甘えたい気持ちをいろいろなかたちで表現しながら、精いっぱい頑張っています。
どうかありのままのわたしたちを認めて、一人ひとりが主人公として大きく豊かに育っていけるように手を貸してください。わたしたちを愛してください。そして生まれてきてよかったと思えるように温かく見守ってください。
わたしたちのことをわかってください
・わたしたちは愛されたいと思っています。また、わたしだけの人を求めています。 ・わたしたちは、いつも自分のことを見ていてほしいと思っています。 ・わたしたちは見るもの、聞くもの、ふれるもののすべてを全身で感じています。 ・わたしたちは、お父さんやお母さんから離れて暮らしています。悲しくて泣いていたり、 寂しくて泣いていたりすることがあります。 ・わたしたちは、心も身体も成長している途中です。だから、あなたにとってあたり前のこともわたしたちはできません。 ・わたしたちは、言葉を使ってのコミュニケーションがまだうまくいきません。 だから、わたしたちはあなたの言うことがよくわからなかったり、自分のしたいことや気持ちを、 泣いたり、物を投げたり、かみついたり、手足をバタつかせたりして全身を使って表します。 ・わたしたちの世界はいつも新鮮で生き生きとしていて、驚きと感動に満ちています。 わたしたちは「いま」を生きています。 ・わたしたちは、まだ時間の流れがよくわかりません。でも、見通しを持った行動は少しずつできるようになっていきます。 ・わたしたちは、失敗をくり返しながら新しいことができるようになります。 ・わたしたちは、離れていたお父さんやお母さんと暮らし始める時に、 今までできていたことができなくなったり、わざと無理なことをいって困らせたりします。 |
わたしたちは、あなたにお願いします。
・わたしたちの肌・目・髪の色や障がいのあることで偏見を持たないでください。 ・わたしたちは、一人ひとり発達のしかたや性格がちがいます。 一人ひとりを見つめて、一人ひとりに合わせてやさしく接してください。 ・わたしたちを他の子と比較したり、発達の目安やあなたの子ども観と比較して、いやがったり叱ったりしないでください。 わたしたちのありのままをまるごと受けとめ、わたしたちが自分のことをだめだと思ったり、 嫌いになったりしないような接し方をしてください。 ・わたしたちは、きょうだいと仲良くしていきたいと思っています。 ・わたしたちの名前は呼び捨てにはせず、愛をこめて呼んでください。 ・わたしたちは、あたたかい雰囲気の中で安心して育ちたいと思っています。 わたしたちのまわりは、いつも笑顔があふれているようにしてください。 ・わたしたちが泣いていたら、そばに来て、まず抱いてください。 そして、泣いているわたしたちの思いをしっかり受けとめてください。 ・わたしたちに関わる時は、乱暴にしないでやさしくていねいに接してください。 ・わたしたちは、ここちよくミルクを飲んだりご飯を食べたりしたいと思っています。 ・わたしたちと一緒に歌をうたったり絵をかいたり、楽しくいっぱい遊んでください。 ・わたしたちのしたくないことを無理にさせないでください。 わたしたちの思いをやさしくていねいに尋ねるようにしてください。 ・わたしたちは、まだしてよいこと、してはいけないことがわかりません。また、何度も同じ失敗をしてしまいます。 大きな声で怒ったり叩いたりしないで、わからないかもしれないけれど 少しずつくり返し、理解できるように教えてください。 ・わたしたちに離れたところから言葉だけで命令したり、 あなたの都合で「早く~しなさい」と急がせたりしないでください。 また、あなたの思いどおりに行動しないからといって叱らないでください。 ・わたしたちは、目に見える変化をしていない時も、目に見えないところで大切な積み重ねの作業をしています。 その時期も温かくしっかり見守ってください。そして、新しいことができるようになった時は、一緒に喜んでください。 ・わたしたちと話す時は、「~したい」「~できるんだ」と力がわくように言ってください。 ・わたしたちが植物や動物とふれあう喜びを感じられるようにしてください。 ・わたしたちがお家で育つ子と同じように、できるだけ多くの生活経験や社会経験ができるようにしてください。 ・わたしたちがいつでも安心して発達に合った支援を受けられるようにしてください。 ・わたしたちが自信を持って生きていくことができるように、わたしたちの「これまで」・「いま」・「これから」を つないでください。 ・わたしたちが、どうしてもお父さんやお母さんと暮らせない時は、わたしたちにとって安心できる場所で 暮らせるようにしてください。 ・わたしたちの大好きなお父さんやお母さんのことをわたしたちの前で悪く言わないでください。 わたしたちが今まで以上にお父さんやお母さんのことが好きになれるように、いっぱいお話してください。 ・わたしたちのお父さんやお母さんにとって、わたしたちのいない生活があたり前にならないように、 こまめにわたしたちの様子を知らせてください。 ・わたしたちのお父さんやお母さんがわたしたちに度々会いに来てくれたり、 外出や外泊をさせてくれるように働きかけてください。 ・わたしたちがお父さんやお母さんを困らせ、試すことは、新たな親子関係をつくるためにとても大切だということを、 お父さんやお母さんにしっかりわかってもらってください。 ・わたしたちがここに来た理由を他の人に話さないでください。 |
わたしたちのお父さんお母さんのことについてお願いします。
・わたしたちのお父さんやお母さんの外見や生まれた場所、心やからだに障がいがあること、 また、ものの見方や考え方、国籍、宗教などで偏見を持たないでください。 ・わたしたちのお父さんやお母さんの中には、小さい時から温かい家庭で育つことができなかったり 、 うまく人間関係がつくれなかったり、辛い思いをしながら必死で生きてきた人もいます。 だから、わたしたちとどう関わっていいかわからないことも多いのです。 あせらずにゆっくりと、わたしたちのことが大切に思えるように助けてください。 ・わたしたちのお父さんやお母さんは、いつもわたしたちと一緒にいたいと思っています。 その気持ちをまず受けとめてください。そして、わたしたちのことを知りたいと思う気持ちや会いたいと思う気持ちを 大事にして、安心できるよう様子を伝えてください。 ・わたしたちのお父さんやお母さんはわたしたちのことを憶(おも)い、精いっぱい頑張って暮らしています。 それを認めて、声に出して評価してください。 ・わたしたちのお父さんやお母さんが、あなたの考える父親や母親のイメージとちがっているからといって、 お父さんやお母さんの立場や気持ちを考えずに、こうあるべきだと言ったりせず、何があってもまず受けとめてください。 ・わたしたちのお父さんやお母さんが、わたしたちを預け、離れて暮らす辛い気持ちを、 お父さんやお母さんのまわりの人にわかってもらってください。 ・わたしたちのお父さんやお母さんがわたしたちと一緒に暮らせるようになるまでに、 不安なことが少しでも少なくなるよう、どんな相談にも気軽に応えてください。 また、わたしたちと一緒に暮らすようになってからも、困ったことがあったらいつでも相談にのってください。 ・わたしたちのお父さんやお母さんが、わたしたちと楽しい時間を過ごしたり、 他のお父さんやお母さんと一緒に参加できる場をつくってください。 ・わたしたちのお父さんやお母さんのことについて、他の人に知られることのないようにしてください。 |
わたしたちのかわりにお願いしてください。
・子どものことで困ったことがあった時、どこに相談したらいいのかわからない人がいます。 乳児院のことをもっと多くの人に知らせて、利用しやすいようにしてください。 ・わたしたちの一人ひとりが大切にされ、いろいろ経験ができるように、わたしたちに関わってくれる人を 増やしてください。 ・わたしたちが病気やけがをした時に、ゆっくり安心して休める場所をつくってください。 ・わたしたちとうまく関われず、わたしたちの心やからだを傷つけてしまったお父さんやお母さんを 支援する仕組みをつくってください。 ・わたしたち赤ちゃんの中には、重い障がいを持っている子がいます。一人ひとりの発達の特性に ふさわしい支援を受けられるように、通ったり、生活したりする施設を身近につくってください。 |
1999年 すみれ乳児院憲章 作成
すみれ乳児院が設立され、25年が過ぎました。
この間私たちは、地域に開かれた施設として、地域の子どもの養育や保育の問題も視野に入れてさまざまな悩みの相談を受け、また実際に多くのお子さんをお預かりし、保護者の方と共に“未来を切り開くたくましい子どもたち”に成長するよう、力を合わせて子育てをしてきました。
私たちは、子どもの立場に立って、現状の処遇の弱点の改善を含め、処遇のあり方についてくり返し討論してきましたが、1994年にわが国が『子どもの権利条約』を批准したことを受けて、より一層豊かな処遇をめざして、新たに論議を重ね、「すみれ乳児院憲章」を作成しました。
私たちは、子どもたちひとりひとりが大切にされ、愛されていると実感してくれるよう願って仕事をしていますが、この子どもたちが力いっぱいのびのびと生きて行け、誰もが「生まれてきてよかった」と思えるような社会を築くことも私たちの重要な仕事だと考えます。乳児院の現実の養育条件も貧弱です。私たちはその改善を保護者や地域の方たちと共に力を合わせてすすめつつ、今後、この「すみれ乳児院憲章」を日々の処遇の指針として、よりよい養育を行っていきたいと考えています。
1999年3月「すみれ乳児院憲章」を作成した後、職員は憲章文を日々の暮らしに生かすように、ひとりひとりの子どもと、ひとりひとりの保護者に対して、ていねいな関わりを心がけてきました。憲章文の多くの項目はすでに職員のものとなり、あたり前のこととなっていますが、まだ努力を要する項目も残っています。しかし、この6年間を振り返ると、憲章文が財団綱領とともにすみれ乳児院の利用者への援助の基盤になっていることと確信します。
さて、このたび「すみれ乳児院憲章」改訂版を作成したのは、1999年の作成の際、発表に期限を設けていたため、文章表現の不適切なものや内容が重複しているものがあったり、誤字および表記の統一性が欠けている点についてしっかり点検できていなかったことに対し訂正を行う必要があったためです。また、作成当時に気づけなかった利用者の権利についても、今回新たな憲章文を加え、より利用者の立場に立った憲章の充実を目指しました。
2000年に制定された「児童虐待の防止等に関する法律」や2004年に改正された「児童福祉法」により、児童福祉施設としての乳児院に求められる役割も変化してきています。
私たちは、今後も「すみれ乳児院憲章」を基に、子どもたちと保護者の方々に対してさまざまな角度から援助ができるよう努力していきたいと考えています。
2017年9月に大阪市旭区に移転し生活様式もグループホーム制に変わりました。前回の「すみれ乳児院憲章 改訂版」を生かし、子どもの権利に関しても新しい項目を加え、新たに「すみれ乳児院憲章 改訂2版」を作成しました。一人ひとりの子どもたちの違いをしっかり受け止め、要求に応じた関わりができるようになりました。保護者に対してもどう支援すれば子どもたちとうまく関われ、日々の生活が円滑に営めるようになるか考え、一人ひとりに合わせて関われるようにしてきました。この「すみれ乳児院憲章」の理解をより深めるために大いに活用され、子どもたちと保護者の方々に対しての支援に生かされることを望みます。
私たちは、子どもの立場に立って、現状の処遇の弱点の改善を含め、処遇のあり方についてくり返し討論してきましたが、1994年にわが国が『子どもの権利条約』を批准したことを受けて、より一層豊かな処遇をめざして、新たに論議を重ね、「すみれ乳児院憲章」を作成しました。
私たちは、子どもたちひとりひとりが大切にされ、愛されていると実感してくれるよう願って仕事をしていますが、この子どもたちが力いっぱいのびのびと生きて行け、誰もが「生まれてきてよかった」と思えるような社会を築くことも私たちの重要な仕事だと考えます。乳児院の現実の養育条件も貧弱です。私たちはその改善を保護者や地域の方たちと共に力を合わせてすすめつつ、今後、この「すみれ乳児院憲章」を日々の処遇の指針として、よりよい養育を行っていきたいと考えています。
1999年3月31日
2005年 すみれ乳児院憲章 改訂
1999年3月「すみれ乳児院憲章」を作成した後、職員は憲章文を日々の暮らしに生かすように、ひとりひとりの子どもと、ひとりひとりの保護者に対して、ていねいな関わりを心がけてきました。憲章文の多くの項目はすでに職員のものとなり、あたり前のこととなっていますが、まだ努力を要する項目も残っています。しかし、この6年間を振り返ると、憲章文が財団綱領とともにすみれ乳児院の利用者への援助の基盤になっていることと確信します。
さて、このたび「すみれ乳児院憲章」改訂版を作成したのは、1999年の作成の際、発表に期限を設けていたため、文章表現の不適切なものや内容が重複しているものがあったり、誤字および表記の統一性が欠けている点についてしっかり点検できていなかったことに対し訂正を行う必要があったためです。また、作成当時に気づけなかった利用者の権利についても、今回新たな憲章文を加え、より利用者の立場に立った憲章の充実を目指しました。
2000年に制定された「児童虐待の防止等に関する法律」や2004年に改正された「児童福祉法」により、児童福祉施設としての乳児院に求められる役割も変化してきています。
私たちは、今後も「すみれ乳児院憲章」を基に、子どもたちと保護者の方々に対してさまざまな角度から援助ができるよう努力していきたいと考えています。
2005年11月30日
2022年 すみれ乳児院憲章 改訂2版
2017年9月に大阪市旭区に移転し生活様式もグループホーム制に変わりました。前回の「すみれ乳児院憲章 改訂版」を生かし、子どもの権利に関しても新しい項目を加え、新たに「すみれ乳児院憲章 改訂2版」を作成しました。一人ひとりの子どもたちの違いをしっかり受け止め、要求に応じた関わりができるようになりました。保護者に対してもどう支援すれば子どもたちとうまく関われ、日々の生活が円滑に営めるようになるか考え、一人ひとりに合わせて関われるようにしてきました。この「すみれ乳児院憲章」の理解をより深めるために大いに活用され、子どもたちと保護者の方々に対しての支援に生かされることを望みます。
2022年2月26日